【建設業】平成27年度 地域経済動向調査


第1章 地域経済動向の調査概要(建設業)

(1)調査目的

 小規模事業者から無作為に抽出した事業者から、アンケート調査等で得られた個々の企業の売上動向、仕入動向、資金繰り動向・採算動向等の調査結果と、4半期に1回実施する景況調査、日本政策金融公庫の各種実態調査、その他統計資料情報等から得られる地域の経済動向資料を調査・分析し、個々の企業の経営状況に応じた情報提供体制を整備する。

 

(2)調査期間・方法

  • 調査期間:平成27年12月15日~平成28年1月15日
  • 調査内容:巻末のアンケート調査票を参照願います。
  • 調査方法:商工会会員の小規模事業者に調査票を配布、記入後商工会が、郵送・FAXにて回収した。
  • 集計・分析期間:平成28年1月25日~2月5日

      回収結果:配布枚数 32枚

                       回収枚数 21枚

                       回収率  65.6%

 

(3)集計やグラフについて

  • SA(選択肢から1ヶのみ選択)、MA(複数選択)、数量(数字記入)を表す。
  • 単純集計は、不明(無回答)を含め100%として集計した。(「不明」は、選択もしくは記入がなかった回答の件数。)
  • MAは回答のあった合計件数を表記、構成比は回答者数に対する比率を表記したため100%を超えている。
  • 集計表を目視で理解しやすいよう、ウェイトが高いカテゴリーを網掛けし強調した。
  • より詳細に分析するため、「代表者の年代」と「主たる業種」でクロス集計した。その際、件数のバランスを取るため、主たる業種別集計では「土木」、「建築」、「その他」の3業種で括った。同様に代表者の年代は「59歳以下」、「60歳代」、「70歳以上」で括った。
  • 円グラフのデータラベルの%標記は、スペースの関係で整数表記とした。
  • クロス集計グラフは、各カテゴリー毎に100%の横棒グラフとし、右端にn数を記載した。n数はSAだと回答件数=回答者数となるが、MAは回答件数>回答者数となる。

【注意点】

  • 役員や従業員の人数及び完成工事の受注割合等で、明らかな数字の誤りは補正した。
  • 調査・集計結果の本文では、主要な数値やグラフを用いて表現し、一部は割愛した。詳細なデータは、「第4章 参考資料にある調査票や集計表を参照のこと」。

第2章 建設業調査・集計結果

1.調査企業の概要

(1)営業年数(数量)

 営業年数を10年単位でみると、「20~29年」、「40~49年」が各5件(23.8%)で最も多い。10年未満の比較的業歴の浅い企業は3件(14.3%)と少ない。また、業歴20年以上の企業が80%を超え、50年以上が4社(19%)ある。

 

(2)代表者の年齢(数量)

 代表者の年齢を10年単位でみると、「60~69歳」が9件(42.9%)で最も多く、2番目が「70歳以上」で、60歳以上が67%となり、代表者の高齢化が進んでいる。また、20代の代表者はゼロで、「30~39歳」も1件と若手の代表者が少ない。

 

(3)役員・従業員数

 役員・事業主数は「1人」が11件、「2人」が6件。正社員数は「0人」が9件、「1~5人」が8件。パートは「0人」が14件、「1人」が3件となっている。

これらを合計人数でみると、「1~5人」が16件(76.2%)と小規模事業者が多いものの、26人以上の企業が1社ある。

 

(4)売上高(SA)

 売上高は「1千万円以下」、「3千万円以下」が各6件(28.6%)で、両者を合わせると過半数となる。また、1億円~5億円の企業が3社ある。

2.質問に対する回答集計・分析結果

Q1 主たる業種・従たる業種

① 主たる業種(MA)

  建設業の主な作業種別をみると、「土木」が11件(52.4%)で最も多く、次いで「建築」が7件(33.3%)、「舗装」・「土木,とび土工,管工事」が各2件の順となっている。

その他には、「家屋解体業」の記載があった。

 

② 従たる業種(MA)

 従たる業種で最も多いのは、「建築」の5件で、次が「土木」の3件。その他には、「農業」が3件あった。

 

Q2 兼業の状況(MA)

 兼業の有無を聞いたところ、「あり」が7件(33.3%)であった。

 また、兼業の内容は、全件が「その他」で、内訳は「農業」が3件の他、「生コン製造販売」、「清掃業」の記載があった。

 



 

Q3 後継者の状況

 後継者に関する質問で、「後継者がいる(親族)」は5件(23.8%)、

「後継者がいる(親族以外)」が1件(4.8%)である。その一方で、現経営者の年齢にもよるが、「後継者なし」は15件(71.4%)と、3/4近くとなっている。

 「後継者あり」の事業承継予定時期は、全員(6件)が「特に決めていない」との回答であった。また、「後継者なし」の承継の見通しは、「事業承継者を探す」はゼロで、「事業売却(M&A等)を検討」が1件ある一方、「事業廃業」が4件ある。また、「特に考えていない」が3件あった。

 



 

Q4 役員及び従業員の状況

 役員(事業主及び専従者)及び従業員の人数を聞いた。役職別の回答状況は以下のとおり。

(役員及び従業員の人数は、「第4章 参考資料」の集計表を参照のこと)

  • 役員は、「1人」、「2人」が各6件(28.6%)で、「5人以上」が1件あった。
  • 事務員は、「0人」が13件(61.9%)で、「1人」が5件、「3人以上」が1件あった。
  • 営業は、「0人」が20件(95.2%)で、「1人」が1件あった。
  • 技術者は、「0人」が10件(47.6%)で、「1~5人」が8件(38.1%)、「6~10人」が3件あった。
  • 一般は、「0人」が16件(76.2%)で、「1~5人」が3件の他、「11~15人」が1件あった。

 また、これらを役員及び従業員の人数と年代別に、以下の表とグラフに示した。

20代・30代・50代の役員・従業員がゼロの企業が60%を超え、若い世代の人数が少ない半面、約半数の企業で60代及び70代以上が過半数を超え、高年齢化している。

 


Q5 完成工事の受注動向

① 官・民受注内訳(MA)

 完成工事高の受注内容を公共と民間に分けて質問した。

 公共のウェイトが「8~10割」と高い企業は6件(28.6%)だが、「0~2割」と低い企業が12件(57.1%)と多く、相対的に公共工事のウェイトは、あまり高くないようだ。

 また、民間のウェイトをみると、「8~10割」と高い企業が12件(57.1%)を占め、逆に「0~2割」と低い企業が6件(28.6%)と少なく、民間工事のウェイトが高くなっている。

 

 

② 公共工事の受注状況(SA)

 公共工事の受注形態をみると、元請のウェイトが「8~10割」と高い企業8件(38.1%)に対し、「0~2割」と低い企業が12件(57.1%)と多く、下請けは総じて少ない。また、公共工事の受注先は、山口県、山口市とも同じ傾向で、「0~2割」が70%を超えており、比較的依存度は低いようだ。

 

③ 民間工事の受注状況(SA)

民間工事の受注形態は、元請が「8~10割」と高い企業が12件(57.1%)と多く、「0~2割」は4件(19.0%)と少ない。また、民間工事の受注先は、山口市で「8~10割」が6件(28.6%)で、グラフには無いが、その他の受注先「8~10割」が40%あり分散している。

 

Q6 昨年の設備投資動向(SA)

 設備投資を「実施」した企業は8件(38.1%)で、「実施していない」企業を下回った。 また、実施した設備投資内容は、「車両運搬具」が5件で、設備投資をした企業の62.5%と最も多く、次が「生産設備」で、その他には「機械」の記載があった。

 



Q7 今期の業績見通し(SA)

① 売上(加工)金額

 前期と比較した売上(加工)金額が、「増加」は5件(23.8%)で、「減少」の10件(47.6%)の半数に留まった。


② 売上(加工)の増減状況

 前期と比較した売上(加工)金額の増減割合を聞いたところ、「約1割増加」が2件、「約2割増加」が3件であった。逆に「減少」の方が多く、「半分以下に減少」が3件ある他、「3割減少」が1件、2割・1割減少と回答した企業が各3件あった。

 

③ 売上単価等の状況

 業績を左右する単価や数量等7項目を、「増加」、「不変」、「減少」から択一で質問した。どの業況項目も「不変」が半数程度あるがこれを除き、「増加」と「減少」をグラフにした。

 売上単価及び売上数量とも「減少」が「増加」を大きく上回る一方で、仕入単価は「増加」が「減少」が上回り、売上減少する中、仕入単価が上昇し採算・業況が悪化している。また、少しでも収益性を高めるため、一部に従業員を増やし、外注費を減少させる試みが見られる。

 

Q8 直面している経営上の問題点(SA)

 現在直面している経営上の問題点を優先度の高い順に選択してもらった。

回答者数(標本数)が少なく選択肢が多いため、回答が分散しているが、優先順位1位は「大企業による競争の悪化」「従業員の確保難」が各3件で、「景気や需要の低迷」が2件で続いた。

 優先順位2位は「原材料価格の上昇」が3件で最も多く、「原材料費・人件費以外の経費増加」と「景気や需要の低迷」が3件で2番目であった。また、優先順位3位は「原材料価格の上昇」、「生産(加工)単価の低下・上昇難」、「従業員の確保難」、「熟練技術者の確保難」、「景気や需要の低迷」が各2件あった。また、その他には、「老齢化」の記載があった。

 

Q9 今後の経営方針

 前問と同様に、経営上の問題に対する今後の経営方針を、優先度の高い順の選択してもらった。

優先順位1位は「現状を維持しながら効率化を図る」が6件で最も多く、「公共工事を増加させる」5件、「民間工事を増加させる」4件、「将来的には廃業も考えている」が3件で続いた。

 優先順位2位は「建設業以外の異業種に参入又は比率を高める」と「将来的には廃業も考えている」が各3件で、優先順位1位・2位に廃業が出ているのが気になるところである。

 また、優先順位3位は「現状を維持しながら効率化を図る」が5件で多かった。

 

Q10 今後の経営方針達成に必要な取組等

 前問に関連し、経営方針の達成に必要な取組を、優先度の高い順の選択してもらった。

優先順位1位は「従業員の確保と人材育成強化」が6件で最も多く、「現状を把握し、将来への展望や効率化を分析するための自社経営分析」が4件で2番目であった。

 優先順位2位は「スキルを向上するための勉強会やセミナーへの参加」と「現状を把握し、将来への展望や効率化を分析するための自社経営分析」が各3件で最も多かった。

 優先順位3位は「スキルを向上するための勉強会やセミナーへの参加」が3件で最も多く、「現状を把握し、将来への展望や効率化を分析するための自社経営分析」が2件であった。

 

Q11 商工会への意見や要望

以下、2件の記載があった。

  • いつも経営に際して、いろいろ相談にのっていただき助かっています。今後ともよろしくお願い致します。
  • いつもやさしい対応に感謝しております。信頼のできることが心強く感じます。

3.主たる業種別のクロス集計・分析結果

 クロス集計にあたっては、標本数が少ないことから、主たる業種を設問の7業種を「土木(11件)」、「建築(7件)」、「その他(5件)」の3つに括り、クロス集計した。

(詳しくは、「第4章 参考資料」にあるクロス集計表を参照のこと)

 以下、主たる業種の特徴が表れているものについて説明する。

(1)調査企業の概要

【代表者の年齢他】

 主たる業種別に代表者の年齢をみると、土木・その他では「59歳以下」の代表者がいるが、建築は、すべて「60歳代以上」で、他業種より高齢化が進んでいる。

 また、建築は正社員数がゼロの企業が7社中5社で、売上高1千万円以下が3社あり、土木より規模が小さい。

 

(2)質問項目に対する回答

【後継者について】

 

 表・グラフは掲載していないが、後継者なしの回答は、土木64%、建築71%、その他80%で大きな変化はない。ただ、その後の対応は、右のグラフにあるように、土木は「事業廃業」が無いのに対し、建築は回答した2社すべてが「事業廃業」と回答している。

 

【設備投資・売上】

 主たる業種別の設備投資状況は、土木では半数、その他の40%が設備投資したのに対し、建築の設備投資は1件で停滞している。

また、売上状況は、どの業種も「減少」が「増加」を上回るものの、建築では「増加」が1件に留まり、60%が「減少」と厳しい状況となっている。

 

【経営上の問題点等】

 経営上の問題点及び今後の方針、達成に必要な取組で優先順1位の内容を、業種別に件数が多いものを表にまとめた。

 経営上の問題点では、どの業種にも「大企業による競争の悪化」が共通してみられる。土木・その他では、「従業員の確保難」が問題点としてあがっているが、建築にはあがっていない。

今後の方針では、土木・その他で、公共や民間工事の増加が方針にあがっているが、建築では「現状を維持しながら効率化を図る」となっている。

また、達成に必要な取組では、建築で「スキルを向上するための勉強会やセミナーへの参加」と前向きな姿勢がうかがえるが、建築・その他で「将来を見据えた(縮小や廃業のための)経営計画書策定」が見られる。

 

経営上の問題点

主たる業種 1番目 2番目 3番目
土木 従業員の確保難 大企業による競争の悪化 圭記や需要の低迷(2位同数)
建築 大企業による競争の悪化 その他2件あるほか、1件の項目に分散
その他 従業員の確保難や大企業による競争の悪化等が1件で分散している

今後の方針

主たる業種 1番目 2番目 3番目
土木 公共工事を増加させる 現状を維持しながら効率化を図る 民間工事を増加させる
建築 現状を維持しながら効率化を図る 1件が分散している
その他 民間工事を増加させる 将来的には廃業も考えている 現状を維持しながら効率化を図る

達成に必要な取り組み

主たる業種

1番目 2番目 3番目
土木 従業員の確保と人材育成強化

現状を把握し将来への展望や

効率化を分析するための自社経営分析

 
建築

スキルを向上するための勉強会や

セミナーへの参加

同上

将来を見据えた(縮小や廃業の

ための)経営計画書策定

その他 従業員の確保と人材育成強化 同上 同上

4.代表者の年代別のクロス集計・分析結果

 代表者の年代10歳単位を、「59歳以下(7件)」、「60歳代(9件)」、「70歳以上(5件)」の3つに括り、クロス集計した。

(詳しくは、「第4章 参考資料」にあるクロス集計表を参照のこと)

 以下、代表者の年代別の特徴が表れているものについて説明する。

 

【後継者について】

 59歳以下の全員が「後継者なし」と回答しているが、年齢的に余裕があり問題は無いが、事業承継に向けた準備は進めておく必要がある。

60歳代及び70歳以上の、約60%が「後継者なし」である。

後継者なしの対応では、60歳代・70歳以上の各2件が「事業廃業」と回答した。

 

【設備投資・売上】

代表者の年代別に設備投資状況をみると、59歳以下に対し、60歳代・70歳以上の設備投資は「実施していない」割合が高い。

また、売上状況では、年齢が上がるにつれて、売上が「減少」と回答した割合が増加し、70歳以上では「増加」はなく、「減少」が80%になっている。

第3章 調査結果のまとめ

 今回実施した地域の経済動向調査の結果判明した、徳地地域における建設業の概要及び経営状況、経営課題と方向性は、以下のとおりである。

調査企業の概要

  • 10年未満の比較的業歴の浅い企業は3社(14.3%)と少なく、業歴20年以上の企業が80%、50年以上が4社(19%)ある。
  • 代表者の年齢は60歳以上が約67%で高齢化が進んでいる。また、建設業はすべて「60歳代以上」で、他業種より高齢化が進んでいる。
  • 従業員5人以下、売上が3千万円以下の小規模事業者が半数以上。中でも建築は、正社員数ゼロが7社中5社、売上1千万円以下が6社と規模が小さい。
主たる業種等
  • 「土木」が11件、「建築」が7件、「土木,とび土木,管工事」・「造園」等が6件。
  • 兼業「あり」があ7件(33.3%)で、「農業」や「生コン製造販売」等。
後継者問題
  • 後継者がいる6件に対し、なしが15件(71.4%)。また、60歳代、70歳以上の約60%が「後継者なし」である。
  • 後継者なしの対応は、「事業廃業」が最も多く4件ある。建築は回答した2社すべてが「事業廃業」で、60歳代、70歳以上の各2件も「事業廃業」と回答。
受注状況
  • 公共のウェイトが「0~2割」が57.1%で、公共事業のウェイトが低く民間事業のウェイトが「8~10割」が57.1%と高い。
  • 公共事業の受注形態は、下請より元請の割合が高く、受注先は山口県と山口市が同程度。
  • 民間工事の受注形態は、下請より元請の割合が高く、受注先は山口県より山口市が多く、その他地域での受注も多い。
設備投資状況
  • 設備投資実施企業は8件で、実施していない企業の13件を下回った。また、建築の設備投資は1件と停滞している。60歳代、70歳以上の設備投資は「実施していない」割合が高い。
  • 設備投資内容は車両運搬具5件、生産設備3件。
今期の業績見通し
  • 売上増加は5件(23.8%)で、「減少」の10件(47.6%)の半数。
  • 売上減少、2倍以上が3件、3割1件。その中で建築は「増加」が1件に留まり、60%が「減少」と厳しい状況となっている。
  • 売上単価及び売上数量ともに減少する一方で、仕入単価が増加、採算・業況が悪化している。
直面する経営課題
  • 「大企業による競争の悪化」「従業員の確保難」
課題への対処方針
  • 「現状を維持しながら効率化を図る」
今後必要な取組
  • 「従業員の確保と人材育成強化」

第4章 参考資料

(1)アンケート調査票

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【建設業】小規模事業者アンケート.pdf
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(2)単純集計表

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